前半の試合展開
立ち上がりから神戸はロングボール主体の攻撃を選択しました。
エース大迫勇也と前線の佐々木大樹をターゲットに
相手陣内へロングフィードを多用し 、
町田陣内でセカンドボールを拾って攻撃に繋げようとします。
一方の町田も韓国人長身FWオ・セフンをめがけたロングパス攻勢で応戦し、
互いに空中戦で一歩も譲らない展開となりました 。
中盤での激しいデュエルが続き、なかなか決定機を作れない中、
前半7分には町田が右CKの二次攻撃から
MF下田北斗のダイレクトボレーでゴールを脅かしますが、
これはわずかに枠の右へ外れます 。
神戸にも徐々にチャンスが生まれます。
前半9分、左サイド裏のスペースへのパスに抜け出した
広瀬陸斗が折り返しのクロスを供給。
相手DFに当たってコースが変わったボールに佐々木が飛び込みましたがわずかに届かず、
それでもGK谷晃生のブラインドを突いてこぼれた球に
エース大迫が反応します。
大迫は胸トラップ気味になったボールを豪快に右足で叩きましたが、
これはGK谷が顔面でブロックする渾身のセーブを見せ、ゴールとはなりませんでした 。
このプレーで谷が治療を受ける場面もありましたが 、
大迫のシュートで会場は大いに沸き、神戸に流れを引き寄せるきっかけとなりました。
その後も神戸はロングボールとサイド攻撃で押し気味に試合を進めますが、
町田も前線のプレスと速攻で応戦します。
前半28分には町田がカウンターからチャンスを迎え、
FW相馬勇紀のスルーパスに藤尾翔太が飛び込みましたが、
わずかに枠を捉えられずヒヤリとする場面もありました 。
終盤にかけては町田が押し返し、
前半アディショナルタイム1分には町田にこの日最大の決定機が訪れます。
左サイドからのクロスにファーサイドでDF岡村大八が折り返し、
走り込んだ藤尾がゴール正面でダイレクトボレー。
しかし、これをCB本多勇喜が身体を張ってブロックし、
神戸は辛くも失点を免れました 。
お互い決定機を作りながらも最後の局面で踏ん張り合い、
前半はスコアレスで折り返します 。
後半の試合展開
後半立ち上がりも両チームの積極的な姿勢は変わらず、
一進一退の攻防が続きます。
やや町田がボールを保持して押し込む時間帯もありましたが 、
神戸は集中した守備でゴールを許しません。
そうした中、神戸は攻撃のリズムに変化をつけ始めます。
後半に入り、相手守備陣が整う前に素早くクロスやロングボールを送り込む形に切り替え 、
攻撃のテンポを上げました。
するとこの狙いが功を奏します。
後半17分(62分)、右サイドでFW佐々木大樹が折り返したマイナスのボールを
MF井手口陽介がダイレクトでゴール前へクロス。
このボールに対応した相手DF岡村が足を伸ばしてクリアを試みましたが、
ボールはその足に当たってゴール方向へ転がりそのままゴールイン。
オウンゴールという形で神戸が待望の先制点を奪いました 。
思わぬ形でリードを得た神戸は、
その後も勢いに乗って追加点を狙いました。
依然としてロングボールとサイド攻撃で相手陣内に攻め込みつつ、
MF井手口を中心に中盤でセカンドボールを拾って主導権を維持します。
しかし町田も黙っておらず、ビハインドを背負うと攻撃のギアを上げます。
DF中山雄太が遠目から浮き球のボールにダイレクトで
合わせて狙うシュートを放つなど、神戸ゴールに襲いかかりました 。
試合終盤、町田は勝負に出て複数の交代策を講じます。
後半25分にはオ・セフンと藤尾の2トップを下げて
FWミッチェル・デュークとFWナ・サンホという新たな前線コンビを投入 。
さらに37分にはMF白崎凌兵とWB林幸多郎を下げて
攻撃的MF仙頭啓矢とDF望月ヘンリー海輝を送り込み、
システムの修正と攻撃の活性化を図ります 。
対する神戸も後半32分、
右サイドで運動量が落ちていた広瀬に代えてFW武藤嘉紀を投入。
武藤は負傷明けで3試合ぶりの出場となりましたが、
前線で精力的に動き出し、町田の最終ライン裏を狙います 。
すると後半36分、武藤が相手DFの背後を突いて抜け出し、
ループ気味のシュートでネットを揺らす場面がありました。
しかしこれはオフサイドの判定で惜しくも得点は認められず、
スタジアムから大きなため息が漏れました 。
1点リードのまま迎えた試合終了間際、
町田はさらにパワープレーを強めます。
後半43分にはついに3バックの一角ドレシェヴィッチを下げて
長身FW桑山侃士を投入し、パワフルな攻撃陣形で同点ゴールを狙いにきました 。
神戸も後半アディショナルタイムに入り、
佐々木を下げてDF飯野七聖を投入し5バック気味の布陣で守備を固めます 。
後半は7分間の長いアディショナルタイムが取られ、
町田の猛攻に神戸サポーターも緊張が走ります。
そして90+7分、町田にこの試合最大の同点機が訪れました。
右サイドから望月ヘンリーのクロスにニアサイドでデュークが飛び込むも触れず、
ファーに流れたボールを桑山がトラップしてシュート!決定的かと思われましたが、
ここでGK前川黛也が果敢に飛び出しブロックし大ピンチを防ぐファインセーブを見せます 。
最後の最後で守護神がチームを救い、直後にタイムアップの笛。
神戸がオウンゴールで得た1点のリードを守り抜き、
ホームで貴重な勝利を手にしました 。
神戸の戦術的な狙いと采配
この試合の神戸は4-4-2に近い布陣で臨み、
明確にロングボール戦術を志向しました。
最終ラインは酒井・山川・本多・鍬先(左から)の4バックを組み、
アンカー的に扇原貴宏、その前に井手口陽介を配して中盤の強度を確保。
両サイドハーフには右に佐々木大樹、左に広瀬陸斗を起用し、
大迫勇也と宮代大聖の2トップを前線に並べました。
序盤からセンターバックやボランチの扇原から
前線の大迫・佐々木をめがけてロングボールを送り、
町田の最終ライン裏やサイドのスペースを突く狙いが見られました
町田は最終ラインに3バック(昌子・岡村・ドレシェヴィッチ)を構え、
中盤中央を厚くしてプレスを仕掛けてきたため、
神戸としては中盤で細かく繋ぐよりもシンプルに前線へボールを付け、
セカンドボールを拾って攻める方針だったと考えられます。
実際、前半はロングボールの競り合いとセカンドボールの奪い合いに終始しましたが、
その中で大迫のポストプレーや佐々木の裏抜けを起点に何度かチャンスを演出しました。
9分のシーンではロングボールのこぼれ球を拾って左サイドに展開し、
クロスから決定機を創出しており、
この戦術が一定の効果を発揮していたことが伺えます 。
守備面では、町田のパワフルな前線に対し神戸は
センターバックの山川哲史と本多勇喜が中心となって対応しました。
空中戦で強さを見せるオ・セフンに対しても粘り強く競り合い、
セカンドボールは井手口や扇原が素早く回収。
町田が得意とするサイド攻撃についても、
両SB酒井高徳と鍬先祐弥がウイングバックの林や
アタッカーの相馬に対して1対1で落ち着いて対処し、
大崩れしない守備ブロックを保ちました。
前半終了間際には押し込まれましたが、
本多の体を張ったブロックに見られるように最後の局面で粘り強く耐え凌いだのは、
守備陣の高い集中力の賜物です 。
攻撃の戦術的な転換点は後半開始から約15分過ぎに訪れました。
神戸は「攻撃のテンポを変え、相手守備陣形が整う前にクロスを入れる」
という狙いを徹底し始めます
具体的には、中盤でボールを持った際にそれまでより素早くサイドへ展開し、
佐々木や広瀬から早いタイミングでクロスを上げました。
62分の先制点はまさにその形で、右サイド深く侵入した佐々木からの折り返しを
井手口がワンタッチでゴール前に送り、
相手のクリアミスを誘っています 。
この得点シーンは「速い攻撃で相手守備のほころびを突く」という後半の狙いが
ハマった格好であり、吉田孝行監督のハーフタイムでの指示が
うまく奏功したといえるでしょう。
采配面では、神戸はリードを奪った後も攻撃の手を緩めず、
前線の運動量を維持するため77分に広瀬に代えて武藤嘉紀を投入しました 。
武藤は前線の一角に入り、大迫・宮代とともに前線でプレッシングをかけつつ、
町田守備陣の裏のスペースを狙いました。
実際に81分には武藤が相手DFラインの背後へのボールに抜け出して
ネットを揺らす場面を作り出し(オフサイドでゴール取消) 、
彼の投入意図であった「相手の圧力をいなしてカウンターで仕留める」
という狙いが垣間見えました。
また、試合終盤には相手のパワープレーに対応するため、
90+1分にアタッカーの佐々木に代えてDF飯野七聖を投入し
5バック気味の布陣へシフト 。
高さのある町田攻撃陣に対して禁じ手とも言える逃げ切り策でしたが、
結果的にこれが奏功し最後の局面で相手に仕事をさせずに済んでいます。
吉田監督の交代策は適切で、
投入された武藤も飯野も与えられた役割をしっかり果たしたと言えるでしょう。
試合総評(神戸目線)と今後への展望
神戸にとっては内容より結果を優先して掴んだ価値ある勝利でした。
試合全体のシュート数では神戸の6本に対し町田は13本と攻め込まれる時間帯も多く 、
決して楽なゲームではありませんでした。
それでも最後まで集中を切らさずに守り抜き、
僅かな好機をものにして勝ち点3を手にしたことは、チームにとって大きな自信になるはずです。
守備陣は粘り強く対応し、GK前川を中心に無失点で終えられたことは高く評価できます。
一方で攻撃面では流れの中から得点を奪えず、
オウンゴールの1点のみにとどまった点は課題です。
ここ3試合は全て1-0または2-1と僅差の勝利が続いており、
もう一段階攻撃の精度とバリエーションを高める必要があるでしょう。
具体的には、ロングボール一辺倒になったときに崩しのアイデアが不足する場面があるため、
ショートパスを交えた崩しやセットプレーからの得点パターンを増やしていきたいところです。
それでもリーグ戦はこれで3連勝となり、
開幕直後の不振を脱してチームは上向きです 。
勝ち点を18(11節終了時点)まで伸ばし、
順位も一桁台へ浮上して上位戦線に食い込んできました。
守備の安定感が増してきたことは今後に向けた好材料であり、
特にベテランの酒井、ボランチ井手口ら守備陣のリーダーシップが光ります。
また、大迫や武藤といった攻撃の核となるべき選手がコンディションを上げてくれば、
得点力不足も次第に解消されるでしょう。
幸運も味方につけて手にした白星をチームの勢いに変え、
今後のリーグ戦でさらなる連勝街道を突き進むことが期待されます。
次節以降も守備の集中を継続しつつ、攻撃面での改良を加えていくことで、
連覇中の王者として再び首位争いに名乗りを上げる可能性は十分にあると言えます。
最後に、この試合を神戸目線で振り返れば、「内容はともかく勝ち切った」ゲームでした。
課題を残しつつも勝ち点3を獲得した事実をポジティブに捉え、
修正点を練習で克服していくことが肝要です。
依然としてシーズンは序盤戦であり、
今後の戦い次第でいくらでも巻き返しは可能です。
神戸としては守備の手応えを維持しつつ、攻撃力向上に努めることで、
タイトル連覇に向けてチーム力をさらに高めていくことが求められるでしょう。
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