サッカーの世界で「三冠(トレブル)」という言葉には、並々ならぬ重みがあります。
それはただのタイトル数ではなく、「その年にどれだけの困難を乗り越え、真の強さを証明したか」の証明でもあるからです。
今回は、世界のサッカー史上わずか**10回しか達成されていない“ビッグトレブル”**をテーマに、歴代の達成チームを振り返るとともに、「なぜそれが特別なのか」「その中で最強は誰か」まで深掘りします。
✅ ビッグトレブルとは?
まず「ビッグトレブル」とは、以下の3つのタイトルを同じシーズン内ですべて制覇することを指します。
- 国内リーグ優勝(例:プレミアリーグ、ラ・リーガなど)
- 国内カップ優勝(例:FAカップ、コパ・デル・レイなど)
- UEFAチャンピオンズリーグ(CL)優勝
この偉業を1度でも達成したクラブは、欧州サッカーの頂点に立ったといって過言ではありません。
🌍 ビッグトレブル達成クラブ一覧
これまでにビッグトレブルを達成したのは、わずかに8クラブ・10シーズンのみ。
年度 | クラブ | 特筆事項 |
---|---|---|
1966-67 | セルティック(スコットランド) | 史上初のトレブル達成クラブ |
1971-72 | アヤックス(オランダ) | クライフ率いる黄金期 |
1987-88 | PSV(オランダ) | 延長戦でCL制覇 |
1998-99 | マンチェスター・ユナイテッド(イングランド) | 伝説の「カンプ・ノウの奇跡」 |
2008-09 | FCバルセロナ(スペイン) | グアルディオラ初年度、メッシ時代の幕開け |
2009-10 | インテル(イタリア) | モウリーニョの“実利サッカー” |
2012-13 | バイエルン・ミュンヘン(ドイツ) | ロッベン、リベリー黄金期 |
2014-15 | FCバルセロナ(スペイン) | MSN(メッシ・スアレス・ネイマール)の大爆発 |
2019-20 | バイエルン・ミュンヘン(ドイツ) | 無敗での制覇、欧州を席巻 |
※2023-24 | マンチェスター・シティ(イングランド) | 近年の超攻撃型サッカーの象徴 ※追記可 |
※記事内に「10回」とありますが、記録更新の可能性もあるため適宜修正を。
🏆 歴代10クラブの「トレブル達成時の姿」とは?
🔰 1966-67 セルティック(スコットランド)
欧州初のトレブルクラブ。全員が地元スコットランド・グラスゴー近郊出身というローカル愛に満ちたチーム。
「ライオンたち」と呼ばれ、欧州制覇という“奇跡”を実現。
- 監督:ジョック・ステイン
- 特徴:縦に速いアグレッシブサッカー
- 精神的支柱:ビリー・マクニール(主将)
🔄 1971-72 アヤックス(オランダ)
“トータルフットボール”の代名詞的存在。ポジションの概念が崩され、すべての選手が攻守に関与。
クライフを中心とした革命軍が、欧州を支配。
- キープレーヤー:ヨハン・クライフ、ネースケンス
- 戦術:全員攻撃・全員守備
- 監督:ステファン・コヴァチ(前任はリヌス・ミケルス)
🛡️ 1987-88 PSV(オランダ)
クライフ世代の影に隠れがちだが、堅守と冷静さでトレブルを達成した渋いチーム。
欧州制覇は決勝でのPK戦という劇的な展開。
- 守備の要:ロナルド・クーマン
- 監督:フリック
- 戦術:4-4-2ベースの堅守速攻型
🔴 1998-99 マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)
「カンプ・ノウの奇跡」で名を馳せた伝説のシーズン。若手とベテランの融合、最後まで諦めないメンタリティが勝利を呼び込んだ。
- 監督:アレックス・ファーガソン
- 主力:ギグス、スコールズ、ベッカム、キーン、ソルスキア
- 戦術:縦に速い4-4-2/リスクを恐れぬ後半勝負
🔷 2008-09 FCバルセロナ(スペイン)
グアルディオラ監督の就任初年度で革命が起きる。**ポゼッションと高強度プレッシングの融合「ティキ・タカ」**で、相手を支配し尽くした。
- 中盤の司令塔:シャビ、イニエスタ
- 絶対的エース:リオネル・メッシ
- 戦術:ポゼッション+即時奪回のハイプレス
🖤 2009-10 インテル(イタリア)
モウリーニョ監督が率いた現実主義の極み。ボール支配は放棄し、守備組織と鋭いカウンターでヨーロッパを制す。
- キーマン:ミリート(決勝ゴール)、スナイデル、エトー
- 特徴:4-2-3-1のブロック+縦カウンター
- 戦術:守って勝つ「実利主義」の完成形
🔺 2012-13 バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
長年CL準優勝に泣いた“バイエルンの復讐劇”。両翼の爆発力と攻守の組織化でついに欧州の頂点へ。
- 監督:ユップ・ハインケス
- 主力:ロッベン、リベリー、ミュラー、ラーム
- 戦術:高精度なクロス+トランジションの速さ
🔥 2014-15 FCバルセロナ(スペイン)
MSN(メッシ・スアレス・ネイマール)の総得点122。個人の爆発力と戦術的柔軟性の融合が、もう一つの“史上最強”を作った。
- 監督:ルイス・エンリケ
- 中盤:ブスケツ&ラキティッチ
- 特徴:ポゼッションもカウンターも自在に使い分ける攻撃バランス
🧨 2019-20 バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)
CLトーナメントで全勝。バルサに“8-2”という歴史的大勝。高ライン+ハイプレスの現代型サッカーを極限まで突き詰めた。
- 監督:ハンジ・フリック
- 攻撃の核:レヴァンドフスキ、キミッヒ、ニャブリ
- 特徴:即時奪回・スピーディな展開・圧力と精度の融合
🩵 2022-23 マンチェスター・シティ(イングランド)
グアルディオラの集大成。偽SBやポジショナルプレーの深化による“流動型”サッカーの到達点。選手層の厚さと戦術柔軟性で無敵化。
- ストライカー:ハーランド
- プレーメーカー:デ・ブライネ、ギュンドアン
- 特徴:可変型システム(3-2-4-1/4-1-4-1)
💡 トレブル達成に共通する条件とは?
各クラブのスタイルや地域性は異なるが、トレブル達成チームにはいくつかの共通点が見られる。
- 明確な戦術哲学とその浸透
- 年間を通した選手層の厚さとマネジメント
- “爆発力”のあるエースの存在
- 流れを変える采配や途中出場の層の厚み
- クラブとファンの一体感、精神力
伝説は、偶然では生まれない
ビッグトレブルという偉業は、「運がよかった」だけでは決して成し得ません。
それは長年のチームビルディング、綿密な戦術設計、そしてシーズン中の軌道修正力があって初めて実現するものです。
10チーム、10通りのやり方。
あなたの中で「史上最強のトレブルチーム」は、どのクラブでしょうか?
🏆 バルサとバイエルンは“二度”の偉業
中でも特筆すべきは、FCバルセロナとバイエルン・ミュンヘンの2クラブ。
この2クラブは、史上で唯一2度のトレブル達成を成し遂げています。
特に注目すべきは、2015年のバルセロナ。
この年のMSN(メッシ・スアレス・ネイマール)は、シーズン合計122ゴールという破格の記録を樹立。
攻撃力・美しさ・破壊力を兼ね備えた、まさに“サッカーの芸術”でした。
一方、2020年のバイエルンは「効率と破壊力」の象徴。
決勝トーナメントでバルサに8-2、チェルシー、リヨン、パリSGを撃破し、歴史的な完全制覇を達成しました。
😲 あのレアル・マドリードは“未達成”
意外かもしれませんが、レアル・マドリードは一度もビッグトレブルを達成していません。
しかし、代わりに持つ武器が“CLの3連覇”。
- 2016~2018年にかけてCL3連覇
- 過去10年で6回のCL制覇
これだけの欧州タイトルを積み上げてきたクラブは、世界でも唯一。
そのため一部のファンからは「トレブルよりCL3連覇の方が価値がある」という声も。
🇫🇷 PSGは次なるトレブル候補か?
フランスの強豪パリ・サンジェルマン(PSG)もトレブル達成を目指す存在ですが、今のところ未達成。
「リーグが楽すぎる」「雑魚狩りリーグ」などと揶揄されることも多いですが、逆にそれだけに“あと一歩”が近いクラブともいえます。
2020年にはCL決勝まで到達し、あと1勝でトレブルだっただけに、次なるトレブル達成候補として最も現実的と見る声もあります。
🎖️ セルティックの偉業が与える“勇気”
忘れてはならないのが、**1967年に達成したセルティック(スコットランド)**の存在。
当時は欧州でもマイナーとされていたスコットランドから、突然現れた奇跡のチーム。
この成功が今も語られるのは、
「どんなクラブにもチャンスはある」とサッカーファンに希望を与えたからに他なりません。
🔚 まとめ:トレブルは奇跡の証明
ビッグトレブルは、ただの“強さ”だけでは成し得ない偉業です。
圧倒的な選手層、タフな日程、運も味方にしなければ到達できない。
だからこそ、それを成し遂げたクラブの名は、永遠に語り継がれるのです。
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